ISBN:4413033086 単行本 池内 ひろ美 青春出版社 ¥1,100
タイトルどおりシンプルな内容で、とてもすんなり心に入ってきた。
 結婚前、知人に「相手を変えようと思っちゃだめだよ」とアドバイスされた。変えない? でもファッションセンスは私の思いに沿ってもらわなきゃ。食べるマナーもなってない、私の力で洗練された男性にしてみせる! そんな意気込みで、私は結婚当初、かなり“上から”モノを言っていた。彼の欠点を変えることが、妻である私のつとめだと錯覚していた。
 彼は大人だから、比較的おおらかに受け止めてくれたが、気分が良かったはずはない。少しずつぎくしゃくした空気が漂うようになってはじめて私は自分の間違いに気がついた。私は彼の欠点ばかりを見ている!
いや、欠点だかどうだかも分からない。ただ私と違うっていうだけかもしれない……。そう気がついた時、いろんな事が良い方にまわりだした。いつもなら「食べるときポロポロこぼさないで!」って文句を言ってたところを、「私のいろんな小言に怒らず、きちんと受け止めてくれてありがとう」って感謝の気持ちを伝えてみた。彼は優しく「ぼくはお箸づかいが下手だからなぁ。ちょっとずつ気をつけるね」と笑ってくれた。ジーンときた。なんて器が大きいの。
 つまらないことにこだわって、彼のいっぱいある魅力が見えなくなっていた。
 この本には「夫婦といえども違う人間」ということを理解する大切さが説かれている。私は体験者として心底、共感する。彼は私とは違う人。だからこそ一緒に暮らしていて楽しい。今、そう思えることが本当に嬉しい。
ISBN:4163174206 単行本 車谷 長吉 文芸春秋 ¥1,619
 映画が話題になっているので興味を覚え、(図書館で借りて)、一気に読みました。
 仕事に「何かもう一つ。」張り合いを見いだせずに会社を辞め、「私が私であることが耐え難い苦痛」と独白するインテリ男が主人公。妻子もいず、守るものは何もなく、精神的にも経済的にもずるずる、ジリ貧にずり墜ちていく彼は、墜ちた先で、ぎりぎりのところで生きている人たちと出会う。出会うのだが決して交わらない両者。なぜなら彼は「自分で」墜ちようと望む贅沢な存在であるから。「中流の生活」に背を向けようと、もがけばもがくほど、世間の常識に縛られている彼の滑稽さが浮き彫りになっていく。決して「墜ちきれない」彼は、ぎりぎりのところで生きている人たちと交流できるわけがない。「うちを連れて逃げて。この世の外へ」。行けるはずもない。だから「心中未遂」。
 

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